けいけん豊富な毎日

思い出の名馬(グラスワンダーpart2)  担【temporalis】

※第1章は→ココ

第2章『奇跡の大逆襲』

これにより『グラスワンダーが復帰するまで』の条件付で的場騎手は
エルコンドルパサーの騎乗を続行する事になりました。
ニュージーランドTでは初の芝も何のその、1番人気に応えて快勝、
奇しくもこのレースで3着に負かしたマイネルラブとの着差は
グラスワンダーが朝日杯でつけたものと同じ2馬身半でした。
続く本番NHKマイルカップでも当然のように1番人気で楽勝、
5連勝でGⅠ戴冠となり快進撃は止まりません。

さすがにここまで来ると的場にも《迷い》が生まれました。

「体が二つあったらどちらにも乗りたい」

それが本音でしょう。
しかし、グラスワンダー陣営、エルコンドルパサー陣営が
共に秋の初戦に選んだのは毎日王冠、どちらかを選ばなければなりません。
そして遂に的場騎手苦渋の決断は下されました。


グラスワンダーでいきます。



そしてグラスワンダー復帰の時はやって来ました。
レースはGⅡ中のGⅡと呼ばれる毎日王冠(芝1800m)、胸は高鳴りました。
グラスは骨折による長期休養明け、しかも夏負けがあったといいますから
普通なら期待の持てる状況ではありません。

しかも、立ち塞がるのはまさにこの時期旬を迎えていた超快速馬サイレンススズカ
1800m~2000mではちょっとこの馬に勝つのは不可能のように思えました。
そしてもう1頭、因縁のエルコンドルパサー
グラスワンダーと違って順調に夏を越して来ただけに、これも簡単に負かせる
相手ではないでしょう。

それでも『グラスワンダーならやってくれる』の想いは強く、
実際グラスの単勝はサイレンススズカに次ぐ2番人気で
エルコンドルパサーのそれを上回っていました。
私は祈るような気持ちでレースを見守りました。

スタートでややグラスワンダーは出遅れました。
しかし、相手は最初から最後までスピードが落ちないサイレンススズカ、
のんびり後方で構えているわけにはいきません。
的場騎手はグラスワンダーに気合いを入れてすぐに中段まで追い上げ、
追撃態勢に入ります。
先頭は快調に飛ばすサイレンススズカ、
800mを46.0、1000mを57.7で通過、

《このままでは完全に逃げ切られてしまう》

そう思った時、大外を果敢に捲くって出た馬が。

グラスワンダーです!

グングンとサイレンススズカとの差を詰め、
2番手で最終コーナーを回ったグラスワンダー、

「さあ行け!」

多くのグラスワンダーファンがそう叫んだでしょう。
しかし、無情にもサイレンススズカとの差は詰まるどころかジワジワと開き出します。
坂上では満を持して追い出した宿敵エルコンドルパサーにも交わされ
力尽きたグラスワンダーはゴールでは5着まで後退、奇跡は起こりませんでした。

59キロを背負ったサイレンススズカは1分44秒9の好時計で楽勝、
2着には自分のレースに徹したエルコンドルパサー(57キロ)が2馬身半差で入線、
グラスワンダーは55キロと恵まれていただけに完敗です。
しかし、私の胸には熱いものがこみ上げました。
確かにグラスワンダーは負けましたが、玉砕覚悟で果敢にサイレンススズカの首に
鈴を付けに行った的場騎手の騎乗に胸を打たれたのです。

《あそこで動かなければ勝ちはない》

着拾いなど眼中にない最強馬の意地と誇りをかけた魂の騎乗だったと思います。



こうして初の敗北を味わったグラスワンダーでしたが、陣営は次走には
相手の相当軽くなるアルゼンチン共和国杯を選び必勝を期しました。
ところが何という事か、直線早目に先頭に立ったグラスワンダーは
次々と後続に交わされ6着に沈んでしまうのです。

さすがに、この相手ならと思われていた一戦だっただけにショックは大きく、
かつての『史上最強の3歳馬』の称号は、ありがちな『早熟の尻すぼみ』へと
変りつつありました。

実はグラスワンダーは慢性的になってしまった骨膜炎にも悩まされており、
この先の戦いに光は見えて来ませんでした。

そんな中でしたが陣営がこの年最後のレースに選んだのはグランプリ有馬記念
朝日杯で圧倒的な強さを見せた中山で果たしてグラスワンダーは変れるのでしょうか。
しかし、中間のグラスの状態は全く上向く気配がなく、ファン投票も
14位とすっかりファンからの信用も無くしてしまっていました。
3歳時のグラスワンダーが放ったとてつもない可能性に胸ときめかせた私は
この状況がもどかしくてなりません。
そんな中、レース前日になって遂に一筋の光が射したのです。

重苦しかった動きが一変、闘争心が戻ったとの知らせに『もしや』の期待が高まりました。
しかし、流石にグランプリは相手が強力です。
グラスワンダーが不振に喘いでいる間にジャパンカップを制した宿敵エルコンドルパサーや
同期のダービー馬スペシャルウイークこそ回避したものの、2冠馬セイウンスカイ
JC2着の女傑エアグルーヴ、春の天皇賞馬メジロブライトらが大きく立ちはだかり、
そう簡単には勝たせてもらえそうにもありません。

実を言うと私はセイウンスカイも大好きな馬でクラシックではずっと応援していました。
スダホーク、ウィナーズサークルと同じ芦毛、そしてアイネスフウジンと同じ逃げ馬
シーホーク産駒好きの私が愛した馬達と重なり、心を大いにくすぐっていたのです。
前走菊花賞では長丁場3000mを絶妙なインターバル走法で
圧巻の世界レコードを叩き出し戴冠、勝算はこの馬の方が遥かに高いように思えました。

そして戦いの火蓋は切って落とされました。
スッと先頭に立つセイウンスカイ、グラスワンダーも内からいいスタートを切って
中段の位置につけます。
セイウンスカイの横山騎手は馬場の良い所を選んで外を回っての逃げ、
まるでアイネスフウジンの弥生賞ようではありませんか。

最初のコーナーで内を通った馬達に一旦差を詰められますが直線に入ると
グングン差を広げ、7~8馬身のリードを奪います。
そのまま隊列は殆ど動かず3コーナーへ。

ここでレースは動き始めます。

オフサイドトラップ、メジロドーベルがペースを上げ、
微妙にペースを落としていたセイウンスカイに肉薄、
しかしセイウンスカイ横山騎手に焦りは無く、またもやインターバル走法の罠にかけたのか?
しかしその時、大外を馬なりのままものすごい手応えで上がってきた馬が。

それは紛れもなくグラスワンダーでした。

『うわっ!来た~!』

鳥肌が立ちました

それはまさにあの朝日杯で見た最強馬グラスワンダーの捲くりでした。
直線で後続を突き放そうとするセイウンスカイを鮮やかな高速コーナリングからの
一気の加速で瞬く間に抜き去るとゴール目がけて一直線。
しかし、ワンテンポ遅れて大外から一気に追い込んで来た馬が視界に入りました。
セイウンスカイマークの有力馬が早目に動いてもがく中、後方で満を持していた
メジロブライトです。

「頑張れ、頑張れグラス!」

私は一瞬焦りましたが、心配は要りませんでした。
グラスワンダーの脚色は最後まで鈍らず、メジロブライトの追撃も1/2馬身差まで。
あの朝日杯から一年余り、同じ中山の舞台で遂にグラスワンダーが先頭で
ゴール板を駆け抜けたのです!

前走後、誰がこのグランプリでの大逆襲を予想できたでしょう?

何とか輝きを取り戻して欲しい

そんな儚い願いに見事グラスワンダーは応えて見せたのです。
強いグラスワンダーの復活に私は感無量、その日はビデオテープを
何度も何度も巻き戻しては観、勝利の余韻に浸ったのでした。

※第3章は土曜の晩にアップ予定

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